私は5年目を迎える訓練生だ。5年前、遠方より関西に転居し、知り合いもいない、誰も知らないippoという訓練組織で学ぶ決意をした。審査面接時の面接官であった先生から「覚悟をもって入ってきて下さい。」と言われ、覚悟をもつとはどんなことなのか、そんなに恐ろしい組織なのかととても不安に思った。
訓練1年目。初めて出会った仲間。そして先生方。新しい出会いとともに始まった、怒濤の訓練の日々。セッテイングワークショップ、アセスメントワークショップ、アセスメントセミナー、グループSV、個人分析。圧倒されながらも、課題に追われ続けた。2年目、3年目は、訓練ケースを複数同時に担当し、個人SVをいくつも同時に受ける事が始まった。
年数を経過するごとに、やりこなしていく課題は減っていったが、情緒的にしんどさが増していった。そして、そのしんどさの正体は自分を知っていくということだと気づき始める。訓練の中で今まで知ることもなかった幻滅する自分と出会うことになる。個人分析の中でも、そして集団の中でも。集団で学ぶというのは乳児的な心性が刺激され、仲間に嫉妬の気持ちをもったり、劣等感を刺激されたりもする。そんなしんどさが増していった時期に、私はある時期に危機的な状況に陥った。無思考状態になり、訓練への意欲も消失してしまう。訓練の場から逃げようと本気で考えた。例えていうなら、広い海で私は不器用にでも泳いでいたのだが、溺れて海の底に沈みかかろうとしていた。その時に、溺れてい
た私の腕をしっかりと掴んで海面に浮上させてくれたのは仲間であった。そして、私が回復し、また泳ぎだすのを見守ってくれていた。泳ぎだしてからは私の腕をそっと離してくれたようだった。私が今でも訓練の場に踏みとどまっていられるのは、そんな仲間の存在があったからである。
覚悟をもつとは、どれほどの困難があるかもしれないということを想像し、持ち堪えようとする人の心構えなのだろうと思う。私は訓練の中で覚悟を持つということを知った。ライバルでもあると同時に戦友でもあり、いつも切磋琢磨する仲間に支えられた体験の中でそれを知ることができたのであろうと考える。