2020年、新型コロナウィルスが流行して私たちの生活は一変します。
対面での接触が制限される一方でオンライン化が進んだことにより、関西から離れた場所に住んでいる私でもやれるかもしれないと思い、訓練を開始することを決めました。
ただ、世の中が大変な時期に訓練をしようと考える変わり者は私くらいだったようです。
同期の訓練生は誰もいませんでした。
知っている人がいない、同期の訓練生もいない、遠く離れた地で私の訓練は始まります。
グループスーパービジョンやワークショップで講師の先生や他の訓練生にオンライン上でお会いする日々が続き、まるでTVで芸能人を見ているような感覚でした。
メールやオンラインの画面上で、「同期がいなくて大変だね」「一人で頑張っているね」等の優しい言葉をかけていただきましたが、正直あまり実感がなかったような気がします。
なぜなら最初から一人だったので、こういうものだと思っていたからです。
訓練2年目から規制が緩和され始め、少しずつセミナーが対面で開催されたり、相談室に出入りするようになります。
講師の先生や他の訓練生に実際会ってみると「あれ?想像していた感じと違うな」などの感覚を持ちつつ、それまで画面上で見ているだけの人たちが、段々実在する生きた人として実感されていきました。
また、他の訓練生と訓練の体験について話す中で、困ったことがあれば教えてもらったり、辛いことがあれば愚痴を聞いてもらったり、自分と同じような体験をしていることが分かって励まされたりして、他の訓練生に支えてもらえることが多くなりました。
今では他の訓練生と直接会って話すことも増え、普段の何気ないやりとりが楽しかったり、「何かあったら連絡して下さいね」という優しい言葉をかけてもらって嬉しくなったりしています。
段々、私が大変だと言われていたのは、こういう体験がなかったからなのかなと分かりかけてきました。
人間、食べたことないものの味は分かりません。
自分の体験したことがないものは、言葉で言ってもらっても分からないようです。
それまで一人が当たり前だった私は、他の人の存在のありがたみがよく分かりませんでした。
ただ年数を重ねて色んな人と直接会って話が出来るようになったことで、段々その温かさが分かってくるようになりました。
精神分析的な心理療法を受けようと思われる人の中には、私のように食べたことがない、経験したことがなくて、人との関わりがどんなものか、よく分からないという人もいらっしゃるかもしれません。
そういった人たちが、今までにはなかった体験を精神分析的な心理療法を通して体験できることを願っています。